
商工会議所青年部 SNS研修 実施レポート|深谷商工会議所青年部様
執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS研修を実施)
本記事は、2026年10月15日に深谷商工会議所青年部様の主催で実施した「商工会議所青年部 SNS研修(第1回 基礎編)」の実施報告と、その中でお伝えしたSNS発信の土台づくりのノウハウをまとめたものです。「何を投稿すればいいかわからない」と感じている地域の事業者の方、そして青年部や商工会議所でSNS研修を企画している担当者の方に向けて、現場でそのまま使える形で解説します。
💡 結論サマリー(30秒でわかる本記事の答え)
地域で仕事をする事業者にとって、SNSは新規集客の道具である前に「相談する前の接客」です。紹介を受けたお客様も、求人を見た人も、連絡する前にまず名前でSNSを確かめに来ます。
だから最初に整えるべきは、投稿の上手さではなく①お客様が迷わないプロフィール(屋号+仕事+地名、コンセプトから始まる自己紹介文、リンク先は1つ)と、②ネタを切らさない仕組み(日常/人/お客様/地域の4つの引き出し)の2つです。
- 深谷商工会議所青年部様で実施したSNS研修(第1回 基礎編)の概要
- 地域の事業者がSNSで「この人に頼みたい」と思われるための考え方
- お客様が迷わないプロフィールの4項目(名前・写真・自己紹介文・リンク先)
- 投稿ネタを切らさない「4つの引き出し」と、地域の話題の使い方
- 初心者がやりがちなNG投稿と、載せる前のひと言確認
1. 地域の事業者に、いま「SNSの土台」が必要な理由
この章の結論:紹介でお仕事が決まる地域の事業者ほど、SNSは「紹介を取りこぼさないための確認先」として欠かせません。
研修の冒頭、参加者の皆さまに1つ問いかけをしました。ご自宅のリフォームを考えていて、信頼している方から「深谷でリフォームするなら、ここの工務店さんがいいよ」と紹介されたら、すぐ電話をかけますか。それとも、一度スマホで調べますか。
多くの方は、連絡する前に一度調べるはずです。そのとき見つかった情報が「安心して連絡できるもの」かどうかで、紹介が仕事につながるかどうかが変わります。SNSは、まだ会っていない人に会社の魅力を伝え、紹介された人の不安をほどく場所です。集客だけでなく、紹介と採用にも効きます。求人を見た人も、応募の前に働く人や職場の雰囲気をSNSで確かめるからです。
SNSから仕事につながる流れには、大きく2つのパターンがあります。
SNSから直接売れなくても、選ばれる理由をつくることはできます。とくに受け皿型の業種は、フォロワー数より「調べられたときに何が見えるか」のほうが大切です。
2. 研修の実施概要
主催者様からは、個人事業主の方を中心に、SNSが初めての方にもわかる内容にしたいこと、聞くだけでなく問いかけを交えたざっくばらんな進行にしたいことをご要望いただきました。そのため、各章で参加者の皆さまに質問を投げかけながら進め、最後はプロフィールの下書きを書くワークで締めくくりました。
深谷商工会議所の会議室で行った第1回(基礎編)の様子
3. 法則1:SNSは「相談する前の接客」と考える
この章の結論:SNSの役割は、きれいなカタログをつくることではなく、お客様の「この人に頼みたい」という気持ちを動かすことです。
3-1. 大手の見た目をまねない。小さな会社の勝ち筋は3つ
SNSに悩むと、フォロワー数の多い人気アカウントや同業の大手を見て、同じような写真・デザイン・リールをつくろうとしがちです。参考にすること自体は悪くありません。ただ、すでに広く知られている会社と、これから地域で信頼を積み上げる事業者とでは、SNSに求められる役割が違います。
大手は世界観を見せるだけでも選ばれますが、まだ知られていない会社が見た目だけをまねると、「知ってもらう」「相談してもらう」ための工夫が抜け落ちてしまいます。小さな会社の勝ち筋は、①コンセプトで濃いファンを増やす、②顔や仕事の裏側を見せて人として距離を縮める、③商圏に絞って深く届けるの3つです。研修では「遠くの1万人より、深谷の100人に覚えられる」とお伝えしました。
3-2. 「お知らせ掲示板」と「デジタルカタログ」で終わらせない
セール情報や「今月のお知らせ」「おすすめ5選」ばかりが並ぶアカウントは、チラシやカタログをSNSに置き換えただけになりがちです。情報を置くだけならお知らせ掲示板、商品をきれいに並べるだけならデジタルカタログ。選ばれているアカウントは、その先の「この会社にお願いしたい」「このお店に行ってみたい」と思う理由まで伝えています。
ここでいう「感情を動かす」とは、強い言葉で驚かせたり、不安をあおったりすることではありません。「同じような悩みの人も相談しているんだ」「この人なら丁寧に説明してくれそう」と、見た人の中に小さな発見と共感が生まれることです。
3-3. 届けるのは「情報」ではなく「文脈」
「新しい商品が入りました」は情報です。それに対して、どんな人のどんな場面に届けたいのか、なぜそれを選んだのか、どんな価値観で仕事をしているのかまで一緒に伝えると、それは文脈になります。同じ商品・同じサービスでも、「この人が言うから信じたい」と思われるのは文脈が積み重なっているアカウントです。研修では、台風で多くの実が落ちた年に、枝に残ったりんごを「落ちないりんご」として受験生に届けた生産者の話を例に、同じりんごでも語り方ひとつで受け取られ方が変わることをお伝えしました。
4. 法則2:お客様が迷わない「プロフィール」を先に整える
この章の結論:投稿より先に、プロフィールの4項目(名前・写真・自己紹介文・リンク先)を整えます。調べに来た人が最初に見るのはここだからです。
Instagram(インスタグラム)の場合、「プロフィールを編集」から次の4つを設定します。研修ではアカウントをお持ちでない方にも、ワークシートに下書きを書いていただきました。
4-1. 名前は「屋号+仕事+地名」
ユーザーネーム(@から始まる英数字)は、昔ながらの屋号のようなもので、覚えやすさが第一です。誕生日の西暦を入れると年齢が特定されて防犯上のリスクになること、アンダーバーを2つ以上続けると打ちにくく覚えにくいことにも注意します。一方、日本語で表示される名前は「看板」です。地域のお客様に選ばれたい事業者は、「屋号+仕事+地名」を基本にしましょう。例:「深谷の外構・造園|◯◯造園」。
入れる地名は「どこからお客様に来てほしいか」で決めます。深谷市内のお客様が中心なら「深谷」、近隣の市も対象なら「深谷・熊谷」のように並べ、全国対応の事業なら地名より仕事内容を優先して構いません。肩書きや専門を詰め込みすぎると、見る人にもSNS側にも「結局何の専門なのか」が伝わりにくくなります。
4-2. 写真は「顔・ロゴ・仕事の様子」のどれか
ひと目で何の仕事の人かが分かる写真にします。代表者が会社の顔になっている場合や、個人事業主ご本人のアカウントなら人物写真で構いません(自撮りより、人に撮ってもらった写真がおすすめです)。ロゴを使う場合は、アイコンが小さく表示されるため、看板や建物を撮った写真ではなくロゴそのものを使いましょう。
4-3. 自己紹介文は「コンセプト → 何者か → 実績」の順で
見る人は、一瞬で「自分に必要かどうか」を判断します。だから自己紹介文は、1行目に「あなたにしかない価値」=コンセプトを置き、続けて何者なのか、実績を書く順番がおすすめです。研修では、保険・工務店・税理士・造園の4業種で書き方の例をお見せしました。そのうち工務店の例を紹介します(数字・資格は架空の例です)。
名前:◯◯工務店|深谷の平屋・木の家
冬あったかい「平屋」の家づくり専門
二代目社長・一級建築士の◯◯です
創業48年・平屋の施工220棟
設計から引き渡しまで、地元の大工が最後まで担当します
建てたあとの小さな修理も、電話1本で駆けつけます
▼完成見学会の日程とご予約はこちらから
1行目で「誰の、どんな悩みに応える仕事なのか」が伝われば、見た人は続きを読んでくれます。資格や年数は、そのコンセプトを裏づける材料として後ろに置きます。
4-4. リンク先は1つに絞る
プロフィールのリンク先は、LINE公式・問い合わせフォーム・LP(ランディングページ)のうち1つにします。見た人が「次に何をすればいいか」が1つに決まっていれば、それが導線になります。選択肢が多いと、人は迷った末に何もしないまま離れてしまいます。
5. 法則3:投稿ネタは「4つの引き出し」から探す
この章の結論:ネタ切れの正体は、才能不足ではなく記録不足です。日常・人・お客様・地域の4つの引き出しにメモをためていけば、投稿に迷わなくなります。
当日、会場の反応が最も大きかったのが、この「4つの引き出し」の話でした。「何を投稿すればいいかわからない」という悩みは、ネタがないのではなく、毎回ゼロから考えていることから生まれます。引き出しを決めておけば、日々の仕事の中にネタが転がっていることに気づけます。
5-1. フォロワーが少なくても、人と想いは届く
研修では、フォロワーが300名前後の段階で投稿した動画が大きく広がった事例を2つ紹介しました。1つは、滋賀県のホテルが職場の日常の一場面を切り取った動画で、26万回以上再生され、「こんな職場で働きたい」というコメントが多く寄せられました。もう1つは、大阪のバーが経営者の想いを語った動画で、6万回以上再生され、既存のお客様の再来店や新しいお客様への認知につながりました。どちらも特別な撮影技術ではなく、「日常」と「人」の引き出しから生まれた投稿です。
5-2. 地域の話題は「入口」、主役は自分の仕事
地域の事業者には、地域ならではのネタがあります。深谷であれば、渋沢栄一翁、深谷ねぎをはじめとする農産物、花き・植木、地域の行事、青年部の仲間の会社、見慣れた街の景色などです。ただし、地域の話題だけで終わらせず、自分の仕事や想いにつなげることが大切です。
投稿する前に「主役は自分の仕事になっているか」を一度だけ確かめる習慣をつけると、地域の話題がそのまま信頼づくりの材料になります。
5-3. ネタ帳は、メモ1行から始める
- 気づいたら、その場でスマホのメモに「引き出し名+ひと言」を書く
- 月に1回、4つの引き出しを見直す。空いている引き出しが次のネタになる
- 1つのネタを、フィード投稿・ストーリーズ・リールと形を変えて使い回す
6. よくある失敗と、載せる前の注意点
この章の結論:告知だけ・売り込みだけの投稿はスルーされやすく、許可のない写真や業界ルールの見落としは信頼を損ないます。
研修でお伝えした、初心者がやりがちなNG投稿は次のとおりです。
- 「◯◯開催!」だけの告知
- 毎回、売り込みばかり
- 既存のお客様しか関心のない営業日のお知らせが大半を占めている
- お客様が許可なく写り込んだ写真
- 業界の広告ルールを確認していない(保険・歯科・士業などは所属先の規程を確認)
6-1. 告知には「なぜやるのか」を1行足す
たとえば相談会の告知なら、「無料相談会を開催します!10月20日」だけでは情報にとどまります。「『保険の見直し、何から?』という声が多いので、今年も相談会を開きます」のように、開く理由を1行足すだけで、告知は文脈になり、届き方が変わります。
6-2. 人が写る写真と感想は、載せる前にひと言確認
お客様と一緒に写る写真は、撮る前に「あとでSNSに載せてもいいですか」と確認しておくと、1枚ずつ確認する手間がなくなります。いただいた感想を紹介するときも「お店のSNSで紹介してもいいですか。お名前は出しません」とひと言添えれば、たいていは快く了承していただけます。
7. 今日からできるワーク:プロフィール下書きシート
この章の結論:研修の最後に参加者の皆さまに取り組んでいただいた4つの問いです。紙1枚とペンがあれば、今日から始められます。
深谷商工会議所青年部様では、書いたシートを第2回の冒頭で見せ合う予定です。11月の第2回(実践編)では、週1回の投稿習慣、伝わる文章の書き方、スマホでの写真撮影、どこまでを人に任せるかを扱います。
よくある質問(FAQ)
研修後、横断幕を囲んで青年部の皆さまと記念撮影
まとめ
地域の事業者にとって、SNSは「相談する前の接客」です。紹介されたお客様も、求人を見た人も、連絡する前にまずSNSを確かめに来ます。だからこそ、最初に整えるべきは投稿の上手さではなく、お客様が迷わないプロフィールと、ネタを切らさない4つの引き出しです。
SNSの信頼は、上手さよりも「続いた回数」で積み上がります。研修の最後には、投稿する前に「この投稿を見たお客様は、どんな気持ちになるだろう」と一度だけ自分に問いかけてほしい、とお伝えしました。「便利そう」ではなく「この人に頼みたい」と感じてもらえたとき、SNSははじめて相談する前の接客になります。ご依頼いただいた深谷商工会議所青年部の皆さま、ありがとうございました。
研修の締めくくりに、青年部の方から記念品をいただきました
著者プロフィール|上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役)
株式会社PR NET 代表取締役。SNS×AI領域に特化した研修・セミナー・コンサルティングを提供。ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所など、大手企業から公的機関まで延べ15,000名以上にSNSとAI活用の研修を実施。「SNSは24時間365日働く営業マン」という思想のもと、広告費に頼らないSNS集客の体系化を専門とする。
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