
中小企業のSNS×AI活用3つの軸|元ウブロ・ジャパンCEO高倉豊先生との共催イベント登壇レポート
最終更新日:2026年10月10日
執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS研修を実施)
💡 結論サマリー(30秒でわかる本記事の答え)
人・物・金がなくても、「選ばれる理由」は見つけられる。なければ創れる。そしてAIは「使うか、使わないか」ではなく「どこに使うか」を決めることが経営判断です。お客様がリアルに確かめたい「核心」は人間が語り、理解を助ける「周辺」はAIで効率化する。この線引きさえ持てば、広告費も専任担当者もいない企業ほどSNS×AIは武器になります。
本記事は、2026年5月20日に東京・新宿で開催した「SNS×AI時代に人、物、金がなくても勝つ方法」(15名限定)の実施報告です。第1部では、外資系ブランド5社の日本法人トップとして業績を立て直してきた元ウブロ・ジャパン代表取締役・高倉豊先生が「選ばれる理由」のつくり方を、第2部では上村菜穂が、それをSNS×AIでどう実装するかをお話ししました。
- 「ブランド再生人」高倉豊先生が20年の外資系トップ経験から体系化した「OBRAメソッド®」の考え方
- 人・物・金がない状況で「選ばれる理由」を創った実例(名入れの口紅をギフトにしたジバンシイの事例)
- AIに任せてよい発信と、人が語るべき発信を分ける「3つの軸」
- 業種別(BtoB/メーカー・物販/店舗)の「核心と周辺」の分け方
- AI活用を「点→線→仕組み」に育てる3レベルと、そのまま使えるプロンプト
- NotebookLMで「専属マーケター」を社内に内製する方法
1. なぜ今、「AIをどう使うか」ではなく「どこに使うか」が経営判断なのか
結論から申し上げます。AIは「悪」でも「万能」でもありません。経営判断として問うべきなのは、使うか使わないかではなく、自社の発信のどこに使うかという設計です。
いま多くの中小企業や個人事業主が抱えている課題は、実はAIリテラシーではありません。「良い商品・サービスがあるのに、選ばれる理由が伝わっていない」ということです。
そこにAIを持ち込むと、2つの誤解が生まれます。
- 誤解①:AIを使うと信用を落とす
- 誤解②:AIがあれば何でもできる
どちらも極端です。正しくは、信用が落ちる場所と、落ちない場所がある。その境界線を持っている企業だけが、リソースの少なさを武器に変えられます。
2. イベント実施報告|2026年5月20日・新宿開催
2-1. 開催概要
2-2. 第1部・高倉豊先生「SNS×AI時代に人、物、金がなくても勝つ方法」
博報堂を経て、ジバンシイ、イヴ・サンローラン、タグホイヤー、シスレー、ウブロと計5社の外資系ブランドの日本法人トップを20年間務め、「ブランド再生人」と呼ばれた高倉豊先生。経営資源が足りない状況で、どうやって競合に勝つのか。ご自身が実際に結果を出してきた事例とともに、その思考法をお話しいただきました。内容は次の「3. 第1部レポート」で詳しくご紹介します。
2-3. 第2部・上村菜穂「広告費0円でも価値で選ばれるSNS×AI術」
第1部で高倉先生が示された「選ばれる理由」を、広告費をかけずに、SNSと生成AIでどう伝え、育てていくか。それが第2部のテーマでした。専門的な開発や高度な自動化ではなく、小さな会社が明日から実践できる範囲に絞ってお伝えしています。
15名限定という規模だったからこそ、参加者お一人おひとりの業種・状況に踏み込んだやりとりができた回でした。
3. 第1部レポート|高倉豊先生が語った「選ばれる理由」のつくり方
この章の結論は、商品で勝てないなら、勝てる土俵を自分で創ればいいということです。華やかなブランドの裏側で、高倉先生が向き合ってきたのは、驚くほど「何もない」現場でした。
3-1. 「ブランド再生人」が置かれていた、人も物も金もない20年
高倉先生は1970年に博報堂に入社し、中東・欧州に計11年間駐在。40歳でパルファム・ジバンシイの日本法人トップに抜擢され、以後20年間、外資系ブランドの日本法人を率いてこられました。
いまでは誰もが知るブランドばかりですが、先生が手がけたのは、立ち上げ直後の販売会社や、業績が落ち込んだブランドの立て直しばかりだったそうです。講演の冒頭で示されたのは、こんな条件でした。
- 金がない:ゼロ、またはマイナスからのスタートで、マーケティング経費はほとんどない
- 人がいない:十分なスタッフがいない
- 売れる商品がない:日本に届くのは世界向けに開発された商品で、日本の消費者が欲しいものではない
それでも外資系企業では、短期間で業績を上げなければ職を失います。この条件のなかで結果を出し続けてきたからこそ、先生の言葉には、机上の理論にはない重みがあります。「人・物・金がない」は、多くの中小企業の現実そのものです。
3-2. 商品を売るのは「選ばれる理由」を見つけるだけ
先生は「商品やサービスを売るのは簡単です」と言い切られました。お客様に「それだったら欲しい」と言っていただける「選ばれる理由」を見つけるだけだ、と。
そのために向き合うのが、お客様からの「究極の質問」です。
消費財なら 「なぜ、私がこの商品を買わなければならないのですか?」
BtoBなら 「なぜ、御社と取引をしなければならないのですか?」
この問いへの答えに「それだったら欲しい」と言っていただけなければ、商品もサービスも売れません。その「それだったら」の部分こそが選ばれる理由であり、メーカーの自画自賛は選ばれる理由ではない——会場の経営者の方々が、深くうなずいていたのが印象的でした。
3-3. 結果を出し続けた思考法「OBRAメソッド®」
では、人・物・金がないなかで、どうやって選ばれる理由を見つけるのか。先生が外資系トップ時代に結果を出し続けた思考法を体系化したのが、OBRA(オブラ)メソッド®(商標登録済)です。
ブリコラージュとは、もともと「手元にあるものを寄せ集めて、自分で作る」という意味の言葉です。設計図どおりに建てた家は同じものをいくつも作れますが、ブリコラージュで生まれたものは二つとありません。資金力も人材も技術力も違う会社が、同じセオリーに従うほうがおかしい。他と違うことのほうが正しい——これが先生の伝えるブリコラージュ思考の核心です。
さらに先生は、制約があることはむしろ武器になるとも話されました。条件が何もない自由な状態で選ばれる理由を考えるのは至難の業で、制約があるからこそ、狙うお客様や販路を絞り込みやすくなるのです。そのうえで、無い物ねだりをやめて与えられた条件で考える癖をつけること、そして目標の達成を公言し「退路を断って考える」癖をつけることを勧めておられました。
もう一つの柱であるアブダクション思考については、ニュートンのりんごを例に説明されました。「りんごは木から落ちる、Aはりんご、だからAは落ちる」と積み上げる三段論法ではなく、「りんごが落ちた。ひょっとして地球が引っ張っているのかもしれない」と、まず仮説を立てる。八方塞がりの状況では、過去のデータや業界の常識からブレークスルーは見つからないからです。そのうえで、実行する前にロジカルに検証する。この順番が、少ない資源で失敗しないための鍵だと先生は話されました。
3-4. 実例|口紅を「男性に」売ったパルファム・ジバンシイ
講演では、先生ご自身が手がけた事例がいくつも紹介されました。ここでは、その中から一つをご紹介します。
1988年、先生がパルファム・ジバンシイの日本法人を立ち上げたとき、スタッフはわずか4名。商品数も少なく、百貨店はまったく興味を示してくれません。マーケティング経費もほとんどない。まさに、人も物も金もない状態からのスタートでした。
百貨店から突きつけられたのは、「なぜこの店にジバンシイを入れなければならないのか?」という究極の質問。百貨店が求めていたのは、新しいお客様を連れてくる策でした。
知名度・色数・価格では、ジバンシイの口紅はシャネルやディオールに勝てません。そこで先生が立てた仮説が、口紅に名前を入れて「世界に一つ」にすれば、ホワイトデーやクリスマスのギフトになるのではないか、というものでした。当時、化粧品をギフトとして打ち出している競合はなく、ホワイトデーには手頃なお返しの品も少なかったのです。
結果、それまで女性しか買わなかった化粧品売り場に男性客という新しいお客様が生まれ、主要百貨店9店に売り場を獲得しました。商品そのものを変えたわけではありません。「商品」の土俵では勝てなくても、「ギフト」という別の土俵を創ったことで選ばれたのです。
このほかにも、ウブロ、シスレー、イヴ・サンローラン、赤ちゃん用フレグランス「プチサンボン」など、商品だけでは勝てない状況から「選ばれる理由」を創ってきた事例が、先生のご著書や講演で語られています。ご興味のある方は、ぜひ高倉豊オフィシャルサイトや、下のプロフィールでご紹介しているご著書をご覧ください。
3-5. AI時代に、人がしなければならないこと
先生は講演の冒頭で、AIについてもはっきりと語られました。AIが情報を簡単にまとめてくれる時代になったのだから、大いに活用すればいい。ただし、次の2つは人がしなければならない、と。
① 質の高い問いを見出すこと
② 決断し、実行し、結果の責任をとること
そして講演の締めくくりには、「プランは100通りある。正しいかどうかは結果が証明してくれる」「結果の出ない正論は、机上の空論と同じ」という言葉がありました。他社と同じ土俵で戦わず、勝てる土俵を見つけ、結果を出す。20年間それを実践してこられた方の言葉だからこそ、会場の空気が引き締まるのを感じました。
先生が「一番大切な能力」として挙げられたのは、次の4つです。
- 自分の好き嫌いを排除できること
- 業界の常識を排除できること
- 他の人の意見を聞けること
- 消費者の視点で考えられること
閃きは、他の人からもらう。
印象的だったのは、アブダクション思考で大切なこととして、先生が「一人で考えず、他人の意見を聞く」と挙げ、その「他人」にAIも含めておられたことです。20年間、知恵ひとつで結果を出してきた「ブランド再生人」が、AIを思考の相手として自然に位置づけている。その姿勢そのものが、会場の経営者の方々への大きなメッセージになっていました。
この「問いと決断は人が担い、AIは大いに使う」という考え方は、第2部で私がお伝えした「核心は人間、周辺はAI」とまっすぐ重なります。第1部で「何を選ばれる理由にするか」を考え、第2部で「それをSNSとAIでどう届けるか」を考える。1部と2部が、一本の線でつながった会でした。
高倉 豊(たかくら ゆたか)/元ウブロ・ジャパン 代表取締役、ブランド再生人アドバイザー
1948年、兵庫県生まれ。自由学園男子最高学部を卒業後、1970年に博報堂に入社し、中東・欧州に計11年間駐在。40歳でパルファム・ジバンシイの日本法人トップに抜擢され、以後、イヴ・サンローラン・パルファン、タグホイヤー、シスレー、ウブロと、計5社の外資系ブランドの日本法人トップを20年間務める。その間、次々と業績を回復させ「ブランド再生人」として知られる。2011年にウブロ社長を退任。現在は、企業の「選ばれる理由」を見つける顧問指導や社員研修、執筆・講演活動を行っている。
主な著書
- 『口紅は男に売り込め!』(ダイヤモンド社)
- 『4つのブランドを立て直した八方塞がりを打破するマーケティング』(KADOKAWA)
- 『結果を出す人はブリコラージュで考える』(かんき出版)
- DVD『伝説のブランド再生人が教える!与えられた条件で圧勝する秘策』(Visionet)
4. 前提|2026年のSNSは「届ける場」から「世界観で選ばれる場」へ
ここからは第2部の内容です。この章の結論は、SNSは「何を発信するか」ではなく「誰として存在するか」の場所に変わった、ということです。
4-1. Instagramの『Your Algorithm』が意味すること
Instagramは、ユーザー自身が「もっと見たいトピック/減らしたいトピック」を入力してリールの表示内容を調整できる機能を発表しました。ユーザーが自分でアルゴリズムを選ぶ時代です。
背景には3つの構造変化があります。
- 情報過多の限界:「おすすめ疲れ」が起き、自分で選ぶ時代へ
- AIへの不信と疲労:AI生成コンテンツが増えすぎ、本物の発信が際立つ時代へ
- Z世代以降の価値観:「与えられる」より「自分で選ぶ」能動的な体験を求める時代へ
これが経営者にとって意味するのは、広告費で押し切る発想からの完全な転換です。「バズ」より深いつながりが効き、「量産」より本物が勝ち、「アルゴリズム攻略」より人の心が届く。つまり、資本力のない企業にとっての逆転のチャンスです。
4-2. 情報ではなく「文脈」が選ばれる理由
「新商品が出ました!」——これは情報です。
一方、こういう伝え方があります。1991年、青森県を襲った台風で収穫期のりんご約40万トンが落ち、被害総額は741億円にのぼりました。それでも枝に残ったりんごがあった。生産者はそのりんごに「どんな逆境でも落ちない」という意味を重ね、受験生に向けて「落ちないりんご」として届け始めた——これが文脈です。
第1部で高倉先生が語られた「選ばれる理由を創る」ことの、まさに一つの形と言えます。文脈とは、この人が何を考え、どういう価値観で、誰に向けて発信しているのかが「積み重なっている状態」のこと。Google検索で出てくるのは広告や資本力のある大手のまとめサイトばかりで、「どんな経営者が、どんな想いで、誰のために」という企業の体温は一覧からは見えません。だからこそSNSが強いのです。
5. AIの使い分けを見極める3つの軸
ここが第2部の中核です。結論は「核心は人間、周辺はAIで」。それを3つの軸に分解します。
5-1. 軸① その内容は「事実」か「体験」か
判断基準はシンプルです。「ググれば出てくる一般論」はAIに任せ、「自社の中にしかない一次情報」は人間が語る。検証可能な情報ほどAIで効率化でき、検証できない感覚は人間にしか伝えられません。
5-2. 軸② お客様は「機能・価格」で選ぶか「意味・信頼」で選ぶか
問いはひとつです。「もし同じような商品・サービスがあったとき、お客様はなぜ御社を選びますか?」——第1部で高倉先生が投げかけられた「究極の質問」を、SNS発信の設計に当てはめたものです。
- 機能・価格で選ばれる:定型のITツール、汎用テンプレート、価格や納期で比較される商品、成分や容量で選ばれる商材 → AIで効率化しやすい
- 意味・信頼で選ばれる:哲学が反映されたブランド製品、作り手のこだわり、伴走型のコンサル・士業 → 人の言葉が必要
ただし法人の場合、「会社全体がどの型か」で終わらせないことが重要です。商品・サービスごとに、機能で選ばれる部分と信頼で選ばれる部分を分けて考えてください。多くの企業はハイブリッド型です。
5-3. 軸③ それは「核心」か「周辺」か
- 核心:お客様が「確かめたい中核」の部分(あなた自身・実績・お客様の変化・実体験)
- 周辺:「理解を助ける」周りの情報(知識・背景・文脈・業界の基礎情報)
- 中間(ブリッジ):自社メソッドの説明なら、思想は核心、用語や手順は周辺
判定に迷ったら、この1つの質問で足ります。
「これは、お客様がリアルに確かめたい部分か?」
YES → 核心(人間が発信)/NO → 周辺(AI活用OK)
お客様が確かめたい部分をAIで作ると、そこに違和感が生まれます。逆に周辺はAIで量産しても信用は落ちません。むしろ「分かりやすさ」が武器になります。
5-4. 業種別・核心と周辺の分け方
6. 明日から実践できるSNS×AI活用法|点→線→仕組みの3レベル
AIは一気に導入するものではなく、点 → 線 → 仕組みと重ねていくものです。
6-1. Level1 AIを「分析パートナー」にする
この段階の結論:お手本を真似るのではなく、自社の過去データから「自分だけの勝ちパターン」を言語化させる。
投稿は続けているのに反応に波がある、何が刺さっているか社内で言語化できていない——という企業向けの入口です。
やり方:保存数が多かった投稿5本と少なかった投稿5本をAIに渡し、「この2グループを比較して、構文や文字数の差、冒頭1行目の型の違い、使われている感情ワードを抽出してください」と依頼します。
お手本アカウントを見るときも、同じトピックや言い回しを真似るのではなく、過去30投稿の1行目だけを渡して「冒頭フックの型を5つに分類し、各パターンが機能している心理的理由を教えて」と聞く。1投稿ではなく30投稿で見ると、勝ち筋が構造として見えてきます。
現場でのコツは3つ。データは多めに渡してAIに絞ってもらう/答えに「もっと深掘りして」と返す/一度で完璧を求めず対話する。
6-2. Level2 AIを「顧客理解のパートナー」にする
この段階の結論:AIを「あなたのお客様の代弁者」として使い、お客様が言語化していないニーズを先回りする。
商品・サービスの概要(価格・内容・対象)を渡したうえで、こう聞きます。
「興味があっても“買わない”お客様の心の中にある理由を30〜50個挙げてください。特に、本人も気づいていないが購入を止めている深層の理由を重点的にお願いします。そのうえで、本質的な理由を3つ抽出してください」
さらに投稿の下書きとペルソナ設定を渡し、「お客様の立場で読んで、『?』が浮かんだ箇所、『売り込みっぽい』と感じた箇所、『自分には関係ない』と感じた箇所を厳しく指摘してください」と依頼します。
ここでの鉄則は、指摘を全部受け入れないこと。100個の「買わない理由」を全部潰そうとすると投稿は売り込みだらけになります。指摘の中から1つだけ選んで修正する。投稿ごとに1つの違和感を潰す、が正解です。
6-3. Level3 AIを「戦略参謀」にする
この段階の結論:広告代理店に月20〜30万円で依頼していた「専属マーケター」の仕事は、2026年、社内でAIと内製できる。
その中核がGoogleの無料AIツールNotebookLMです。これは、あなたの過去の全資料を暗記している24時間稼働の「専属秘書」だと考えてください。
「ビジネスブック」に入れる5つの素材
- 自分の商品・サービス紹介(LP、メニュー、料金表)
- ブランドの世界観(コンセプト文、目指す方向性、こだわり)
- お客様の声(感想メール、アンケート、レビュー)
- 過去のヒット投稿(反応が良かった上位3〜5本のキャプション)
- 理想のお客様像(年齢、悩み、買う理由、買わない理由)
これを入れておくと、毎月のInstagramインサイトを渡してこう聞けます。
「今月のインサイトを見て、アカウントに起きている変化と、次の1ヶ月で試すべきことを3つ提案してください」
ビジネスブックを読み込んだAIだからこそ、あなたのお客様像・世界観の視点で数字を「翻訳」してくれます。
3ヶ月で育つ流れ:1ヶ月目は現状把握、2ヶ月目は先月比の変化をAIが指摘し始め、3ヶ月目には「次の3ヶ月、この層を狙いましょう」と、あなたの言葉で戦略が返ってくるようになります。
7. 現場で最も反応が大きかったのは「NotebookLM」だった
15名限定の会でしたが、終了後に最も多くいただいたのは、NotebookLMに関する声でした。
「NotebookLMを知らなかった」
「自分がインプットしてきた知識を、こういう形でまとめられることがとても勉強になった」
ここに、中小企業のAI活用の本質があると考えています。多くの経営者が「AIに何かを生み出してもらう」ことばかりを考えます。けれど実際に効くのは、すでに自社の中に眠っている資産(過去のセミナー資料、お客様の声、ヒットした投稿、ご自身が学んできた知識)を、検索可能な状態にすることです。
新しいものを作る前に、持っているものを使える形にする。これは高倉先生が第1部で語られたブリコラージュ思考——無い物ねだりをせず、手元にあるもので勝ち筋を創る——そのものであり、「人・物・金がなくても勝つ」という本イベントのテーマと、まっすぐつながっていました。
8. よくある失敗3つ
① AIに全部書かせて、そのまま投稿する
文章は整いますが、体温が消えます。AIの答えは「素材」として使い、最後は必ず自分の言葉で仕上げてください。
② 分析させただけで終わる/データが少なすぎる
投稿3〜5本ではパターンは見えません。また、分析結果を行動に落とさなければ意味がありません。
③ ビジネスブックを一度作って、それきりにする
ビジネスは生きものです。完璧なビジネスブックを目指さず、月1回の更新でAIを少しずつ賢くしていくほうが確実です。AIの戦略提案も鵜呑みにせず、あくまで仮説として自分の感覚と合わせて検証してください。
9. よくある質問(FAQ)
人・物・金がない中小企業は、何から「選ばれる理由」を考えればいいですか?
第1部で高倉豊先生が示されたのは、お客様からの「なぜ、私がこの商品を買わなければならないのですか?」(BtoBなら「なぜ御社と取引しなければならないのですか?」)という究極の質問に向き合うことでした。商品の機能や価格で競合に勝てない場合でも、名前入りの口紅を「ギフト」として打ち出したジバンシイのように、「勝てる土俵」を自分で創ることはできます。
AIを使って発信すると、お客様に「手抜き」だと思われませんか?
使う場所によります。業界の基礎知識・用語解説・比較データといった「周辺」領域はAIで量産しても信用は落ちません。一方、お客様の変化や実体験といった「核心」をAIで作ると違和感が出ます。判定は「これは、お客様がリアルに確かめたい部分か?」の一問で足ります。
AIツールは何から始めればいいですか?
まずは無料で使えるNotebookLMをおすすめしています。自社の資料・お客様の声・過去の投稿を入れるだけで、あなたの文脈で答えるAIになります。リサーチ用途では、リアルタイム情報と本音に強いX(旧Twitter)のGrokも有効です。
発信するSNSはどれを選べばいいですか?
中小企業・個人事業主であれば、世界観と信頼づくりに強いInstagramを軸にするのが基本です。Xは拡散・速報、Facebookは経営者同士や既存顧客との関係維持、YouTubeは専門性の蓄積と、目的で使い分けてください。
高倉豊先生の講演・研修・顧問の相談はどこからできますか?
高倉先生は現在、企業の「選ばれる理由」を見つける顧問指導や、社員の方々がご自身の商品・サービスの選ばれる理由を考える社員研修、講演・執筆を行っておられます。ご経歴や活動内容は高倉豊オフィシャルサイトをご覧ください。
同じような研修を自社向けに依頼できますか?
可能です。株式会社PR NETでは、企業様ごとにオリジナルで構成・ご提案する研修・講演を行っています。今回のような1〜1.5時間のセミナー形式から、複数回の内製化支援まで対応しています。
AI研修に使える助成金はありますか?
要件を満たす場合、厚生労働省の人材開発支援助成金の対象となる可能性があります。ただし、審査制のため支給は確約されないこと、訓練時間(10時間以上のOff-JTなど)の要件があること、計画届は研修開始の1か月前までに提出が必要で事後申請はできないこと、2027年3月31日までの時限措置であることにご注意ください。また2026年8月の改正により、汎用的なプロンプトの作り方だけを学ぶ訓練などは対象外となりました。要件と申請の流れはSNS運用研修に使える助成金|要件・申請手続き・対象スキルにまとめています。
10. まとめ|1万フォロワーを目指さなくていい
最後に、正直なお話をひとつ。
私はInstagram集客の講師として全国で登壇していますが、実は「Instagramがあまり好きではない」と感じる瞬間があります。棘や毒で注目を集めるリール、過剰に隙を作って親近感を演出する投稿、泣きながら撮影される動画。これらが「バズる正解」とされている空気に、強い違和感を持っているからです。
けれど、SNSの風潮に流される必要も、無理に隙を作る必要もありません。
第1部で高倉先生が見せてくださったのは、華やかに見えるラグジュアリーブランドの裏側で、人も物も金もない中、知恵によって「選ばれる理由」を創り続けてきた20年でした。流行りに乗らず、他社の真似をせず、勝てる土俵を自分で見つける。バズで売らない、煽りで売らない、積み上げた品格と世界観と信頼で選ばれ続ける——その哲学を、私たちも見習えばいい。そしてSNS×AIは、その哲学を中小企業・個人事業主が実装するための、最も平等な武器になります。
1万フォロワーを目指す必要はありません。500フォロワーを1,000フォロワーへ。そのフォロワー一人ひとりが御社のブランドを信頼し、選び続けてくださる関係を、仕組みとして構築する。
それが、人・物・金がなくても勝つ、SNS×AI時代の本質です。
改めまして、ご一緒させていただいた高倉豊先生、荒木翔揮様、そしてご参加くださった皆様に、心より御礼申し上げます。
上村菜穂(うえむら なほ)/株式会社PR NET 代表取締役
14歳でメールマガジン読者2万人を8ヶ月で集め、当時の歴代最年少記録を樹立。2015年に独立し、SNS・Webを軸とした集客支援に従事。2018年よりSNSマーケティング講師として活動し、ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所などで、延べ15,000名以上(2026年7月時点)に研修・講演を実施。「広告費をコストカットして理想のお客様が集まるSNSづくり」をコンセプトに、SNS×AI×Webマーケティングで中小企業を支援している。
株式会社PR NETでは、SNS集客×AIをテーマにした研修・講演事業を行っています。講座は各企業様に向けてオリジナルに構成・ご提案いたします。人材開発支援助成金の対象要件や申請の流れについても、あわせてご案内しています。