
インスタグラムとLINE公式の使い分け|草津商工会議所様セミナー実施レポート(参加者33名)
最終更新日:2026年9月10日
執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS研修を実施)
💡 結論サマリー(30秒でわかる本記事の答え)
インスタグラムとLINE公式の使い分けは、「どちらが人気か」ではなく「どちらが何の役割を担うか」で決まります。Instagram(インスタグラム)は、まだ自社を知らない人に見つけてもらう「出会いの場」。LINE公式アカウントは、一度つながったお客様との関係を育て、来店・予約・再購入につなげる「関係を深める場」です。
本記事は、2026年9月7日に草津商工会議所様主催で実施したセミナー(参加者33名・120分)の実施報告と、当日お伝えした「数字の見方 → 次の接点づくり → 続けられる仕組み」の3つのノウハウをまとめたものです。地域で事業を営む中小事業者・店舗の方が、明日から1つだけ変えられる形で解説します。
- インスタグラムとLINE公式を、役割で使い分ける考え方
- まず見るべき3つの数字(リーチ・保存・プロフィールアクセス)の読み方
- 数字が伸びないときに、どこを見直せばよいかの症状別チェック
- LINE公式のあいさつメッセージ・リッチメニューの設計ポイント
- 生成AIに任せてよい範囲と、人が担うべき範囲の線引き
1. 「投稿しているのに売上につながらない」が起きる理由
この章の結論です。売上につながらない発信の多くは、SNSを「お知らせ掲示板」や「デジタルカタログ」として使ってしまっています。情報を置くだけ、商品をきれいに見せるだけでは、「この会社にお願いしたい」「このお店に行ってみたい」と思う理由までは伝わりません。
地域の事業者の方から、次のような声をよくお聞きします。
- 投稿しているけれど、来店・問い合わせ・売上につながっている実感がない
- 忙しくて、投稿する時間が取れない
- いいねや保存などの反応が少ない/フォロワー数が増えない
- 担当が替わると、投稿の雰囲気も頻度も変わってしまう
こうしたとき、ついやってしまうのが「人気アカウントの見た目のマネ」です。参考にすること自体は悪くありません。ただし、すでに多くの人に知られている会社・ブランドと、これから地域のお客様との信頼を積み上げる事業者では、SNSに必要な役割が異なります。
すでに知名度がある企業のSNSは「世界観を見せる」ために使えます。一方、まだ知られていない事業者に必要なのは「知ってもらい、次の行動につなげてもらう」こと。見た目だけをマネると、自社にとって本当に必要な役割が抜け落ちます。
売上や集客につながっているアカウントは、SNSを「人の感情を動かすもの」として使っています。SNSは、来店・問い合わせ・購入の“前”から始まっている接客です。スマートフォンの画面の中で「来店前の接客」が行われている、と考えると、投稿に何を書くべきかが変わってきます。
2. 実施概要|草津商工会議所様主催セミナー
滋賀県の草津商工会議所様にて、地域の事業者の方に向けたセミナーを実施しました。草津商工会議所様では、6年連続でのご依頼となります。
設計にあたって決めていたのは、「今日、ご自身の発信で“まず、これをやってみよう”と思えることを1つ持ち帰っていただく」という一点です。全部を一度に変える必要はありません。以下は、当日お伝えした内容を3つの柱に再構成したものです。
3. 使い分けの前提|SNSは「順位」ではなく「役割」で選ぶ
この章の結論です。「どのSNSが一番いいですか」という問いには、正解がありません。正しい問いは「このSNSに、どの役割を担わせるか」です。
3-1. Instagramは「出会う場所」、LINE公式は「育てる場所」
- Instagram:まだ自社を知らない新しいお客様に見つけてもらう。写真・動画で商品やサービスの魅力を見せ、保存・比較・検討につなげる
- Threads(スレッズ):言葉で考え方や人柄、専門性を伝える。会話から新しい人とつながる
- LINE公式アカウント:一度つながったお客様との関係を深める。再来店・リピート・予約につなげる
2026年のSNS集客では、「フォロワーを増やす」だけでなく、検索・おすすめ表示・会話から見つけてもらう流れが強くなっています。Google検索だけでなくInstagramやThreadsの中で情報を探す人が増え、フォロー外へのおすすめ表示から新しい人と出会う機会も広がりました。Instagramで「見せる」、Threadsで「話す」、LINE公式で「育てる」。この3つを分けて考えると、どこに時間を使うべきかが見えてきます。
3-2. オープンメディアとクローズドメディアは、強みが違う
SNSやブログのような誰でも見られる「オープンメディア」は認知を高めるのが得意です。一方、LINE公式やメールマガジンのような「クローズドメディア」は信頼を高めるのが得意。SNSだけで終わらせず、次の接点をつくることが大切です。
なお、じっくり考え方やノウハウを伝えて信頼を育てたい場合はメールマガジン、予約・来店・クーポンなど行動につなげたい場合はLINE公式、という分け方も有効です。「たくさん送る」より「届いてよかった」と思われる配信をという基準を持つと、配信の内容と頻度が決めやすくなります。
4. Instagram側|3つの数字で「次の一手」を決める
この章の結論です。インサイトを見る目的は、投稿を採点することではなく、次に何を改善するかを知ることです。見るべき数字は、まず3つで十分です。
4-1. リーチ・保存・プロフィールアクセスは、セットで見る
- リーチ=何人に届いたか:投稿を見た「人数」です。同じ人が3回見た場合、リーチは1、閲覧数は3と数えます。まずは前回より届いた人数が増えたかを見ます
- 保存=あとでもう一度見たいか:「役に立った」「あとで使いたい」と思われたときに起こりやすい反応です。いいねは相手のため、保存は自分のため。保存の多い投稿は、お客様が何を知りたいかを教えてくれます
- プロフィールアクセス=もっと知りたいか:投稿から次の行動へ進んだサインです。「プロフィールへのアクセス数 ÷ リーチ数 × 100」で率として見ると、投稿ごとの比較がしやすくなります
大切なのは、この3つを並べて見ることです。たとえばリーチは多いのに保存が少なければ、届いてはいるが内容が十分に刺さっていない可能性があります。保存は多いのにプロフィールアクセスが少なければ、内容は役立っているが、会社への興味にはつながっていない可能性がある。3つ並べて初めて、改善点が見えます。
数値の水準は、業種・アカウント規模・投稿内容によって変わります。他社との比較より、まずは自社の過去投稿との比較をおすすめしています。なお、インサイトを見るにはビジネスまたはクリエイターの「プロアカウント」への設定が必要です。
4-2. 数字が少ないとき、見直す場所は決まっている
数字は、直す場所を教えてくれます。全部を一度に直さず、まず1か所だけ改善するのがコツです。
4-3. Instagramの「中」だけでなく「外」も見る
インサイトの数字(=Instagramの“中”)だけで判断すると、SNSが売上につながっているかは分かりません。あわせて、Instagramの“外”で起きた行動も見ます。
- 中:リーチ・保存・プロフィールアクセス(投稿を見た人の反応)
- 外:Googleでの指名検索、Webサイトへのアクセス、LINE公式への登録、問い合わせ・予約、来店時アンケート(実際の行動)
“中の数字”ד外の行動”を並べると、SNSが売上につながる途中経過が見えてきます。来店時に「どこで知りましたか」と一言うかがうだけでも、この“外”のデータは集まります。効果測定の指標をさらに詳しく整理したい方は、インスタの効果測定|見るべき指標と数字の読み方もあわせてご覧ください。
5. LINE公式側|「つながった後」を設計する
この章の結論です。LINE公式で最初に整えるべきは、配信の本数ではなく「あいさつメッセージ」と「リッチメニュー」の2つです。この2つは一度作れば自動で働き続けるため、忙しい事業者ほど費用対効果が高い場所です。
5-1. あいさつメッセージに入れたい4つのこと
あいさつメッセージは、友だち追加した瞬間に自動で届くメッセージです。ここに入れたいのは次の4つ。
- お礼:登録してくれたことへの感謝
- 登録特典:約束したクーポンや資料を渡す
- 自己紹介:何のお店・会社なのかを簡潔に
- 次回予告:これから何がどのくらいの頻度で届くのかを伝える
複数の吹き出しを設定できますが、最初からたくさん詰め込む必要はありません。「①お礼・自己紹介 ②登録特典 ③次にしてほしいこと」の2〜3通で十分です。まずは短く設定して、実際の反応を見ながら改善するほうが、結果的に早く整います。内容は後からいつでも変更できます。
5-2. リッチメニューには「次にしてほしい行動」を入れる
リッチメニューは、トーク画面の下部に固定表示されるメニューです。どのプランでも無料で使え、表示内容はいつでも変更できます。ここに置くべきは、お店の紹介ではなく「次にしてほしい行動」です。
- 優先して入れるもの:予約/問い合わせ/商品購入/メニュー・サービス一覧
- 必要に応じて入れるもの:アクセス/会社・店舗について/ポイントカード
逆に、おすすめしないものが2つあります。1つは各種SNSへのリンク。LINE公式の登録者はもともとSNSから来ている場合が多く、そこへ戻してしまうと、魅力的なコンテンツが並ぶSNS側に流れたまま戻ってこない可能性があります。もう1つは、広告費を支払っている予約サイト(ポータルサイト)へのリンク。せっかく自力で集めたお客様を、大きなメディアのリストにしてしまっては、掲載料からの卒業が遠のきます。ただし、予約サイトからしか予約しないお客様がいるのも事実なので、数値を測定しながら判断してください。
5-3. 【私の失敗談】キーワード応答は4文字以内にする
LINE公式には、決めたキーワードが送られてきたら自動で返信する「応答メッセージ」の機能があります。これは、登録者がどんな方なのかを把握するうえでも役に立ちます(LINE公式は、何か1通送ってもらわないと誰が登録してくれたのか分かりません)。
当日、私自身の失敗談としてお話ししたのがこの設定です。以前、お友だちへ「『個別面談希望』と送ってください」と呼びかけたことがありました。予備として「個別面談」「面談希望」も登録していたのですが、実際に届いたのは「個別面接希望」。1文字違いで自動応答が動かず、手動で対応することになりました。
教訓は明確です。「キャンペーン」「クーポン」のような一般的な単語でない場合、キーワードは4文字以内に収める。5文字以上にすると、お客様にとってややこしく、似た単語と間違えさせてしまう可能性が上がります。あわせて、必要に応じて類語・ひらがな・敬語も登録しておくと安心です(英字は小文字・全角でも反応しますが、カタカナで登録したものはひらがなには自動で反応しません)。
6. 続けられる形にする|核心は人、周辺はAI
この章の結論です。事業者らしさは、AIを使うと失われるわけではありません。失われるのは、「自分にしか出せない材料」までAIに作らせてしまったときです。
6-1. 1つの発信を「核心・中間・周辺」に分ける
1つの投稿の中には、核心・中間・周辺が同時に含まれています。この3つを分けて考えると、AIに任せてよい範囲がはっきりします。
周辺領域はAIを活用しやすい場所ですが、出てきたものは「完成した発信」ではなく「下準備」と考えます。複数の案から自社に合うものを選び、必要な部分だけを採用し、自分たちの言葉に調整する。最後は人が選んで発信につなげます。
なお、当日いちばん軽く試せる方法としてご紹介したのが、AIを「書き手」ではなく「聞き手」にする使い方です。「私は〇〇(自分の仕事・商品)をしています。なぜこの仕事を始めたのか、その想いを言葉にしたいので、私に5つの質問を1問ずつしてください」と伝えるだけ。AIが質問し、自分が答える。それを繰り返すと、答えた言葉がそのまま投稿のネタになります。うまく答えられない質問こそ、伸びしろです。
6-2. 生成AIを安全に使うための5つの確認
総務省・経済産業省が公表しているAI事業者ガイドライン(第1.2版・2026年4月1日公表)でも、知的財産権や偽情報・誤情報などが生成AIのリスクとして整理されています。実務では、次の5点を公開前に確認してください。
- 個人情報・社外秘はそのまま入力しない:個人名・連絡先・住所、顧客を特定できる相談内容、契約書・見積書・顧客名簿、未公開の商品や売上情報、パスワードなど。「外部に出ても困らない情報か」を入力前に確認する
- AIはもっともらしく間違えることがある:数字・日付・料金、法律や制度、SNSの最新仕様、商品の成分・性能、人名・引用元は必ず裏を取る。AIの回答は「完成した事実」ではなく確認前の下書き
- AIで作ったものでも権利確認は必要:他者の文章や画像に似すぎていないか、有名キャラクターやロゴを使っていないか、写真に写る方から掲載許可を得ているか、利用サービスの商用利用条件を満たしているか。文化庁も生成AIと著作権に関する考え方やチェックリストを公開しています
- 健康・美容などの効果を断定させない:「必ず治る」「これだけで痩せる」「誰でも同じ結果が出る」といった表現は、AIが自然な文章で書いてきても使わない。消費者庁も、十分な根拠なく消費者に誤認させる表示をしないよう示しています
- 公開ボタンを押す前に、人が最終確認する:AIが作った文章でも、公開した情報の責任は発信者が持ちます
生成AIは、法律や制度の情報を整理することはできます。しかし「この表現は法律上問題ないか」「この画像を商用利用してよいか」といった最終的な法的判断を、AIだけに任せることはできません。判断に迷ったら、公開前に専門家へ相談してください。
7. よくある失敗と注意点
- 完璧な分析をしようとして、止まってしまう:数字を見る → 理由を考える → 1つ改善する → 次の投稿で試す。この1周を回すほうが、精緻な分析より前に進みます
- 他社と比べて落ち込む:数値は業種・規模・投稿内容で変わります。比較対象は他社ではなく、自社の過去投稿です
- LINE公式の配信本数を増やしすぎる:配信頻度や内容によっては、通知を負担に感じられることもあります。本数ではなく「届いてよかった」と思われる内容を基準にします
- リッチメニューを情報の一覧表にしてしまう:メニューは案内板ではなく、次の行動へのボタンです
- AIの出力を「事実」として扱う:AIが出した分析は正解ではなく仮説です。次の投稿で確かめて、初めて自社の知見になります
- 担当者が替わると発信も変わってしまう:属人化を防ぐには、この記事で挙げた「見る数字」「あいさつメッセージの4項目」「核心・中間・周辺の線引き」を社内の共通ルールとして文書化しておくのが有効です
8. よくある質問(FAQ)
InstagramとLINE公式、どちらから始めるべきですか?
すでに来店客やお得意様がいる店舗型・予約型のビジネスであれば、LINE公式のあいさつメッセージとリッチメニューを先に整えるほうが早く成果が見えます。一方、まだ知られていない状態から新規のお客様を増やしたい場合は、Instagramを先に整えます。どちらか一方を選ぶというより、「出会う場所」と「育てる場所」の両方を、順番をつけて用意していく形になります。
投稿する時間が取れません。どこから手をつければよいですか?
投稿本数を増やす前に、一度作れば自動で働き続ける場所から整えます。具体的には、LINE公式のあいさつメッセージとリッチメニュー、そしてInstagramのプロフィールです。そのうえで、投稿は「リーチ・保存・プロフィールアクセスのうち、いちばん弱い1つ」だけを直す形にすると、限られた時間でも改善が積み上がります。
LINE公式で配信すると、ブロックされそうで不安です。
負担に感じられるのは、多くの場合「本数」ではなく「自分に関係のない内容が届くこと」です。あいさつメッセージの段階で「これから何が、どのくらいの頻度で届くのか」を伝えておくと、受け取る側の期待とずれにくくなります。そのうえで、配信のたびに「これは届いてよかったと思ってもらえる内容か」を一度確認してください。
生成AIに投稿を任せると、自社らしさは失われませんか?
失われるのは、AIを使ったときではなく、「自分にしか出せない材料」までAIに作らせたときです。経験・お客様を見て感じたこと・大切にしている考え・最終的な判断は人が出し、情報の整理や構成案、言い換えはAIに手伝ってもらう。この線引きを保っている限り、AIを使うほど発信は続けやすくなります。
同じ内容のセミナーを、自分たちの商工会議所・団体でも開催できますか?
可能です。今回は120分・33名・対面での実施でしたが、時間・人数・オンライン/対面の別、参加者の業種構成に合わせて内容を組み替えています。会員事業者向け、青年部向け、創業支援向けなど、対象者によって重点を置く章も変えられます。詳しいご相談はお問い合わせページから承っています。
9. まとめ
売上につながるSNSは、3つをつなげて考えます。
- 数字から、お客様の反応を知る:リーチ・保存・プロフィールアクセスから、次に直す部分を見つける
- 出会ったお客様との関係を育てる:Instagram・Threadsで見つけてもらい、LINE公式で次の接点をつくる
- 無理なく続けられる形をつくる:核心は人から、中間はAIと一緒に、周辺はAIに下準備を任せる
投稿を公開する前に、一つだけ考えてみてください。「この投稿を見たお客様は、次にどんな気持ちになり、何をしたくなるでしょうか?」「役に立った」なら保存し、「もっと知りたい」ならプロフィールを見て、「ここなら安心できそう」なら来店・LINE登録・問い合わせへ進みます。SNSは、来店・問い合わせの前から始まっている接客です。
今日からの進め方も、一つずつで大丈夫です。今夜はインサイトを開いて3つの数字を確認する。今週はLINE公式のあいさつメッセージを見直す。次の投稿では、自分の経験を材料にしてAIと役割分担してみる。一つ変えて、反応を見て、次に生かす。その積み重ねが「選ばれるアカウント」を育てます。
著者プロフィール|上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役)
株式会社PR NET 代表取締役。SNS×AI領域に特化した研修・セミナー・コンサルティングを提供。ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所など、大手企業から公的機関まで延べ15,000名以上にSNSとAI活用の研修を実施。「SNSは24時間365日働く営業マン」という思想のもと、広告費に頼らないSNS集客の体系化を専門とする。
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