
生成AIを、発信と仕事の力に|学び舎mom株式会社様主催 AI活用トークライブ実施レポート
本記事は、2026年11月2日に学び舎mom株式会社様の主催で開催された、Coursera奨学金プログラム記念のオンライン特別トークライブに、上村菜穂がAI活用セミナーの講師として登壇した実施報告です。生成AIを「使ってみる」段階から、SNS発信や仕事に活かす段階へ進みたい個人事業主・小さな会社の方に向けて、当日お話しした考え方と具体的な使い方をまとめます。
💡 結論サマリー(30秒でわかる本記事の答え)
生成AIは「何を任せ、何を自分で語るか」を決めてから使うと、SNS発信の信頼と効率が両立します。想い・お客様の変化・体験談といった「核心」は自分の言葉で、知識や用語の説明といった「周辺」はAIに任せるのが基本です。
AIツールは「どれが一番か」ではなく「何をお願いするか」で選びます。まずは今困っていることを書き出し、そこに合う1つから試すのが、AIに振り回されずに仕事を進める近道です。
- 学び舎mom株式会社様主催オンライントークライブの開催概要と、参加者の声
- 3年前と今で、AIの使い方は何が変わり、何が変わらないのか
- 「核心は人間、周辺はAI」でAIに任せる範囲を決める方法
- ChatGPT・Claude・Gemini・Grokなど生成AIの使い分け早見表(2026年秋時点)
- 無料版から有料版に切り替える境界線と、AI初心者が最初に試したい問いかけ
1. 開催概要|学び舎mom株式会社様主催 オンライン特別トークライブ
結論:AIを使い始めた方が「発信と仕事にどう活かすか」を、講師との対話で深めるオンライン企画でした。進行役の矢上清乃様からの質問に上村が答えるトーク形式で、画面共有で実際の操作もお見せしながら進めました。
本企画は2日間のトークライブで、翌11月3日には金丸裕佑様が「仕事・事業に活かす」をテーマに登壇されました。本記事は、上村が登壇した11月2日の回の実施報告です。
1-1. 当日、参加者の声から見えたこと
冒頭で「普段どのAIを使っていますか」とお聞きしたところ、ChatGPTを中心に使っている方が多数でした。そのうえで印象的だったのは、次の3つの声です。
- 「AIの使い分けが難しい」:ツールが増えすぎて迷うという声が複数あがり、まずは使うツールを絞って集中することの大切さで意見が一致しました
- 「無料版でも使えるとは知らなかった」:X(旧Twitter)のAI「Grok」を紹介した際、進行の矢上様から出た言葉です。知っているかどうかだけで、リサーチの幅は大きく変わります
- 「新しいAIの設定が不安」:新しいサービスほど、最初にどこを設定すればよいのか分からないという声がありました。後述のMeta「Muse」の項で、最初に見直したい設定をまとめています
2. 3年前と今|AIで変わったこと、変わらないこと
結論:AIは「文章づくりの道具」から「育てる相棒」に変わりました。それでも、人が担うべきところは変わっていません。
上村が生成AIに初めて触れたのは2022年12月です。当時はもっともらしい間違いも多く、「面白い道具」という程度の印象でした。ところが2023年に入ると、わずか数か月で仕事に使える道具になりました。2023年6月にはTOKYO創業ステーション(丸の内)で「【発信力・効率化を高める】Instagram×ChatGPT集客術」に登壇しています。当日は、そのときの資料と今を比べながらお話ししました。
一方で、変わらないことも3つあります。任せるところは任せ、人だからこそできることに力を注ぐこと。大切なのは「誰が発信するか」であること。そして、最後の事実確認は人が行うことです。
最初から便利だったわけではなく、数か月で仕事の道具になりました。今「よく分からない」と感じている方も、焦る必要はありません。
3. 「核心は人間、周辺はAI」|AIに任せる範囲の決め方
結論:お客様がリアルに確かめたい部分は自分で、それ以外はAIで量産してかまいません。AIで投稿が「嘘っぽく」なるのは、AIを使ったからではなく、任せてはいけない部分まで任せたからです。
3-1. 周辺|AIで量産してよい領域
- 業界の基礎知識・用語解説
- 歴史・背景・文脈
- 比較・データ・理論
- 商品の仕組みや成り立ち
- 世界の事例・トレンド
ここはAIに任せても信用は落ちません。むしろ、分かりやすさが武器になります。
3-2. 核心|自分の言葉と実写で発信する領域
- あなた自身の人柄や想い
- 実際のお客様の変化・反応
- 実績・体験談・ストーリー
- 商品を使った「リアルな結果」
- お客様へのリアルな対応
ここをAIで作ると、読み手は違和感に気づき、信用を落とします。必ず、自分の言葉と実際の写真・動画で発信しましょう。
3-3. 迷ったときに使う1つの質問
判断に迷ったら、「これは、お客様が“リアルに確かめたい部分”か?」と自分に問いかけてください。YESなら核心として自分で発信し、NOなら周辺としてAIを活用します。
上村自身は、自分の文体をAIに登録しているため、AIの下書きも自分の口調に近い形で出てきます。それでもAIの答えはあくまで「素材」です。最後は必ず自分の言葉で仕上げ、大事な文章は一晩置き、責任の大きい判断はノートとペンで考えるようにしています。
4. SNSは「情報」より「文脈」で選ばれる
結論:SNSは「何を発信するか」ではなく「誰として存在するか」の時代です。同じ体験でも「この人が言うから信じる」という選ばれ方に変わっています。
当日は、情報と文脈の違いを青森県の「落ちないりんご」の例でお伝えしました。「新しい産直りんごが届きました!」は情報です。一方、1991年の台風で多くのりんごが落ちるなか、枝に残ったりんごに「どんな逆境でも落ちない」という意味を重ね、受験生に届け始めたという背景まで伝えると、それは文脈になります。商品の価値は変わらなくても、受け取る人の心の動き方が変わります。
SNSの流れも、バズより深いつながり、量産より本物、アルゴリズム攻略より人の心が届く方向に変わっています。広告費も専任の担当者もいない個人や小さな会社にとって、これは逆転のチャンスです。文脈をつくるネタは、次の4つの切り口から探すと見つけやすくなります。
5. 生成AIの使い分け早見表(2026年秋時点)
結論:「どのAIが一番か」より「何をお願いするか」で選ぶと迷いません。上村は1つに絞らず、お願いごとに使い分けています。
※2026年11月2日時点の情報です。名称・機能・料金は変わることがあるため、最新の内容は各社の公式サイトでご確認ください。
名前や料金は数か月で変わります。たとえばNotebookLMは、2026年7月に「Gemini Notebook」へ名前が変わりました。覚えておきたいのは、ツールの名前よりも「お願いの仕方」です。
6. 当日ご紹介したAI活用の実例
結論:AIは「点(投稿1本ずつ)→線(お客様理解の蓄積)→仕組み(参謀として育てる)」の3段階で使うと、発信全体がつながります。当日は、その段階ごとに役立つツールを実演を交えてご紹介しました。
6-1. Gemini Notebookで「自分のビジネスブック」を作る
Gemini Notebookは、読み込ませた資料だけを根拠に答えてくれるAIです。一般論ではなく、あなたの資料に基づいた回答が返ってくるため、お客様から専門外の質問を受けたときの確認にも役立ちます。最初に入れておきたい素材は次の5つです。
- 自分の商品・サービス紹介:LP・メニュー・料金表
- ブランドの世界観:コンセプト文・目指す方向性・こだわり
- お客様の声:感想メール・アンケート・レビュー
- 過去のヒット投稿:反応がよかった上位3〜5本のキャプション
- 理想のお客様像:年齢・悩み・買う理由・買わない理由
毎月のInstagramインサイトを渡して「今月のインサイトを見て、アカウントに起きている変化と、次の1か月で試すべきことを3つ提案してください」と頼むと、お客様像や世界観を踏まえて数字を“翻訳”してくれます。資料の内容を音声で解説してくれる機能もあり、上村は形式の中から「評論」を気に入って使っています。
6-2. Grokで本音とトレンドを拾う
リサーチには、X(旧Twitter)の中にあるAI「Grok」が向いています。リアルタイムの情報や、お客様の不満・本音といった「不」の感情に強いため、発信のネタ探しや商品づくりのヒントが見つかります。上村の利用割合は全体の3〜5%ほどですが、欠かせない道具の1つです。
6-3. Canva「Magic Layers」で画像の一部だけ直す
AIで作った画像は「1文字だけ違う」「ここだけ直したい」ということがよくあります。2026年3月にCanvaが発表した「Magic Layers」を使うと、一枚の画像を文字・写真・飾りに分けて、その部分だけ直せます。当日は画面共有で実際に操作し、数字やフォントの調整に使える点で矢上様とも意見が一致しました。イラストや図解はきれいに分かれる一方、写真のような画像は分かれにくいこともあります。
6-4. Meta「Muse」でタスク漏れを防ぐ(最初に見直したい設定も)
Instagramを運営するMetaのAIエージェント「Muse」は、2026年10月23日に日本で提供が始まりました。基本機能は無料で、18歳以上が対象です。上村は、ClaudeやChatGPTに自分の情報を引き継ぎ用の文章にまとめてもらい、それをMuseに渡して使っています。すると、カレンダーに入れていない毎週月曜のメールマガジンについて「今日はメルマガの日です」と知らせてくれました。仕事のタスク漏れが減るのがありがたい使い方です。
一方で、新しいAIほど最初の設定が大切です。使い始めたら、データコントロールの中にある「AIモデルの改善への協力」をオフにしましょう。公開写真が画像生成で参照される可能性があるため「共有と再利用」の設定も確認し、ほかのAIから引き継ぐ情報は仕事に必要な範囲に絞ってください。
6-5. Claude Skills・Coworkで「覚えさせる・預ける・任せる」
上村が仕組みとして育てているのが、Claudeの2つの機能です。初心者向けの覚え方は「Skillsは教える、Coworkは任せる」です。
- 覚えさせる(Claude Skills):文体・型・判断基準を登録する。例:note記事、メールマガジン、投稿の添削
- 預ける(Googleドライブ):過去のセミナー資料やノウハウを、AIが読める形で1か所にまとめる
- 任せる(Claude Cowork):フォルダの資料を読ませて、整理や下書きまで進めてもらう
実は今回のトーク資料も、この仕組みで作りました。6月のセミナー資料をClaudeが読み、古くなった情報を見つけて最新情報を調べ、修正したものです。上村がしたのは「何を伝えるか」を決め、最後に自分の言葉で直すことでした。研修資料の「何ページに何が書いてあるか」を記録してGoogleドライブに保存する使い方も、資料を把握する場面の多い仕事で大きく役立っています。同じ説明を3回したら、AIに覚えさせるタイミングです。
7. 無料版と有料版の境界線
結論:上限に当たって「使えるようになるまで待つ」状態が出たら、有料版に切り替えるタイミングです。仕事で使うなら、待つ時間そのものがコストになります。
最初の有料版としておすすめしたのは、Google Workspaceです。自分の会社や屋号のメールアドレスを持てる(独自ドメインは別途必要)うえ、Googleドライブの容量が大きく増え、GeminiやGemini Notebookを有料プランで使えます。個人事業主でも、きちんとしたメールアドレスがあること自体が信頼になります。
なお、2023年6月の登壇でも「まずは無料版で慣れ、日常業務で効率を上げたいと感じたタイミングで切り替える」とお答えしていました。3年たっても、この考え方は変わっていません。お客様や会社の情報を扱う場合は、入力した内容がAIの学習に使われない設定になっているかもあわせて確認しましょう。
8. AI初心者が最初に試したい1つの問いかけ
結論:AIに答えを出させるのではなく、AIに質問してもらうと、自分だけの発信ネタが生まれます。当日は、どのAIでも使える次の一文を画面共有でご紹介しました。
AIが質問し、あなたが答えます。その答えた言葉が、そのまま投稿のネタになります。答えるのはあなた自身なので、「核心」が自分の言葉のまま残るのがこの方法のよいところです。
新しいツールを試すときは、先に次の2つを書き出しておくと、AIを触るだけで1日が終わることを防げます。
- 業務で、何を改善したいのか
- 自分は、何に時間を使っているのか
9. よくある失敗と注意点
結論:失敗の多くは、AIに任せる範囲と、試す道具の数を決めないまま使い始めることから起きます。
- 核心までAIで作ってしまう:体験談やお客様の声までAIで整えると、読み手は違和感を覚えます。3-3の1問で線を引きましょう
- 困っていないことまで試してしまう:便利なAIは膨大にあります。困りごとから選ばないと、AIを触る時間だけが増えて仕事が進みません
- AIの動画で集客しようとする:AIの動画は「見て学ぶ」には向いていますが、買うきっかけになるのは人の発信です。上村は動画そのものを作らせるのではなく、動画編集ソフトの文字起こしやテロップ入れといった裏側の作業をAIに任せています
- 最初の設定を見直さない:入力内容の学習利用や画像の共有設定は、使い始めに確認しておきましょう
トークの最後には、AIの専門家が紹介していた「女子中高生が、AIには『ってかさ〜』と話が変わるところがないからつまらないと言っている」という話に触れました。AIは、前に来た言葉から次に来る可能性がいちばん高い言葉を出す仕組みです。人と話す面白さは、その人の経験から、ふと「これとこれ」が結びつくところにあります。全く違うところからアイデアを持ってくるのは、これからも人の役割です。
よくある質問(FAQ)
まとめ
今回のトークライブでお伝えしたかったのは、「発信するのは人。AIは裏側の手間を減らし、自分の考えを磨くために使う」という一点です。任せる範囲を決め、困りごとから道具を選び、AIに質問してもらいながら自分の言葉を見つける。この順番で使えば、AIは発信を「らしくない」ものにするのではなく、続けやすくしてくれます。
上村にとってAIは、余白をつくる道具です。一人で働いていても、一人じゃない。そう感じられる使い方を、これからも研修やセミナーでお伝えしていきます。お招きくださった学び舎mom株式会社様、進行の矢上清乃様、ご参加の皆さま、ありがとうございました。
著者プロフィール|上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役)
株式会社PR NET 代表取締役。SNS×AI領域に特化した研修・セミナー・コンサルティングを提供。ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所など、大手企業から公的機関まで延べ15,000名以上にSNSとAI活用の研修を実施。「SNSは24時間365日働く営業マン」という思想のもと、広告費に頼らないSNS集客の体系化を専門とする。
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