SNS・AI研修に使える助成金|対象になる研修の条件と申請の流れ
💰 この記事の位置づけ
この記事は「SNS研修・AI研修に使える助成金」に特化した記事です。どんな研修が対象になるのか、訓練時間や申請手続きの要件、2026年8月の制度改正で変わった点をまとめています。
📎 研修そのものの費用相場は → AI研修の費用相場|形式別の料金体系と費用の内訳を解説
📎 研修の内容・プログラム詳細は → SNS×AI研修プログラム|内容・形式・導入の流れ・導入事例
📎 ChatGPT研修の導入・効果は → ChatGPT社内研修とは?効果・導入5ステップ・定着のさせ方
最終更新日:2026年9月11日
執筆:上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役|大手企業・公的機関で延べ15,000名以上にSNS×AI研修を実施)
💡 結論サマリー(30秒でわかる本記事の答え)
SNS研修・AI研修は、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の対象となる可能性があります。経費助成の率は中小企業75%、大企業60%です。ただし審査制であり、支給が確約される制度ではありません。
2026年8月3日の改正で、対象になるかどうかは「研修名」ではなく「対象者の職務にどれだけ直結しているか」で判断されることが、これまで以上に明確になりました。研修名に「AI」「DX」と入っているだけでは足りません。
もうひとつ見落とされやすいのが訓練時間です。対象は10時間以上のOff-JTで、単発の講演や半日研修だけでは要件を満たしません。計画届は研修開始の1ヶ月前までで、事後申請はできません。
- SNS研修・AI研修が助成対象になるかを分ける3つの判定軸
- 2026年8月3日の制度改正で変わった2点と経過措置
- 訓練時間10時間以上を満たす研修設計の組み立て方
- 申請の流れとスケジュール、研修会社に確認しておくこと
1. 対象になるかは「研修名」ではなく「職務との直結度」で決まる
「SNS研修は助成金の対象になりますか」というご相談をよくいただきます。結論から言えば、同じテーマの研修でも、設計次第で対象にも対象外にもなります。
2026年8月3日に施行された改正で、この点がはっきりしました。厚生労働省のリーフレットには、生成AIに関する訓練の具体例が2つ挙げられています。「生成AIを活用して商品提案書の構成案作成、文章生成、修正方法を学ぶ営業担当者向けの訓練」は助成対象。一方「生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練」は助成対象外です。
どちらも生成AIの研修ですが、前者は営業担当者の具体的な業務にそのまま使える内容であるのに対し、後者は特定の業務への適用を伴わない汎用的な内容だ、というのが判断の理由です。研修名に「AI」「DX」と入っているかどうかは、判断材料になりません。
この記事では、制度の基本を押さえたうえで、どんな設計にすれば「職務に直結する訓練」になるのかを、研修を提供する側の視点で整理します。
2. 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の基本
2-1. どんな制度か
新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、労働者に新たな分野で必要となる知識・技能を習得させる訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する厚生労働省の制度です。DX化・GX化に関する訓練も対象に含まれます。本コースは2027年3月31日までの時限措置とされています。
2-2. 助成率と上限の考え方
- 経費助成の率:中小企業75%、大企業60%(要件を満たすと認められた場合の率です)
- 経費助成の上限:受講者1人・1訓練あたりの上限額が、企業規模と実訓練時間数の区分に応じて設定されています(下表)
- 賃金助成:経費助成とは別枠の助成項目です。所定労働時間内であること、雇用保険適用者であることなどの条件を満たした場合に対象となります
※受講者1人・1訓練あたりの経費助成の上限額です。助成されるのは、実際に支払った訓練経費に助成率を掛けた額か、この上限額のいずれか低い方です。
※eラーニング・通信制による訓練(通学制・オンラインのライブ研修と組み合わせる場合を含む)は、訓練時間にかかわらず中小企業15万円、大企業10万円です。
※出典:厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」令和8年8月3日版
上限額は年度の改正で見直されることがあります。検討にあたっては、厚生労働省の人材開発支援助成金のページで最新の詳細版パンフレットをご確認ください。
2-3. 事業主側の主な要件
- 雇用保険の適用事業所であること
- 労働関係法令を遵守していること
- 職業能力開発推進者を選任していること
- 計画届を事前に提出し、届け出た内容どおりに実施すること
- 訓練を受ける労働者が雇用保険被保険者であること
3. 2026年8月3日の改正で変わった2点
これから検討する企業にとって、最も影響が大きい改正です。厚生労働省のリーフレット「令和8年8月3日からの変更点について」に、変更点が2つ示されています。
3-1. 対象とならない訓練が明確になった
DX化・GX化に関する訓練のうち、次の2つに当てはまる内容は助成対象外となりました。
- 職業、または職務に間接的に必要となる知識・技能を習得させる内容のもの
- 職業、または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの
全社員向けのリテラシー研修や、概念の理解にとどまる内容が対象外に寄る、ということです。具体的な判定の考え方は次の章で扱います。
3-2. 受講回数に上限が設けられた
同一の労働者が本コースで助成を受けられる訓練の受講回数は、一の年度で3回までとなりました。このうちeラーニングによる訓練は、同一の労働者につき一の年度で1回までです。年度は支給申請日を基準に4月1日から翌年3月31日までを指します。
複数の研修を組み合わせて計画している企業は、同じ社員が何回受けることになるかを先に数えておく必要があります。
経過措置について
今回の変更には経過措置があります。契約・申込・発注などの行為が行われた日が2026年8月2日以前であることを書類で確認できる場合、従前の取り扱いが適用されることがあります。該当する可能性がある場合は、契約書・申込書・発注書など日付のわかる書類を保管したうえで、管轄の労働局にご確認ください。
4. 対象になる研修・ならない研修を分ける3つの判定軸
厚生労働省のリーフレットでは、判断のポイントが3つの問いの形で示されています。自社の研修計画をこの3つに当てはめてみると、どこを直せばよいかが見えてきます。
4-1. 特定の職業・職務に必要となる知識や技能を習得するものか
「誰の、どの業務が、研修後にどう変わるか」を一文で言えるかどうかが分かれ目です。営業担当者が提案書の構成案づくりに生成AIを使えるようになる、という設計は職務に直結しています。一方、全社員が生成AIの使い方を一通り知る、という設計は職務が特定されていません。
4-2. マナー・リテラシー・概念理解にとどまっていないか
リーフレットでは、DXの概念・デジタル技術の概要・データ活用の考え方を学ぶ訓練は、DX化を進めるうえでの共通知識の習得にとどまり、具体的な作業として業務に適用される内容ではないため対象外、と説明されています。「知る」で終わる研修ではなく、「できるようになる」研修かどうか。ここが実務上いちばん引っかかりやすい点です。
4-3. 訓練内容に沿って対象労働者を選定しているか
内容がよくても、受講者の選び方で対象外になることがあります。リーフレットの例では、自社のエネルギー使用量データの収集方法やCO₂排出量の算定手順を学ぶ訓練について、算定業務を担当する者が受ければ対象、人事や営業に従事する者が受ける場合は対象外とされています。「その研修を、その人が受ける理由」まで含めて計画届に書けるかが問われます。
4-4. SNS研修・AI研修に当てはめると
厚生労働省の詳細版パンフレットにも、SNS・Web集客に近い例が載っています。事業内容を問わず職務に関連する訓練と判断される例として、営業企画の担当者にWebマーケティングの手法を身につけさせる訓練が挙げられています。また、DX化に伴う訓練の例として、小売業の営業部門でITツールを活用したWeb集客のノウハウを習得させる講座が紹介されています。どちらも、担当する職務と研修の中身がはっきり結びついている点が共通しています。
3つの軸を、実際の研修テーマに当てはめて整理すると次のようになります。同じ「SNS研修」でも、設計によって位置づけが変わることがわかります。
※上表は判定の考え方を示した整理です。実際に対象となるかは、訓練内容・事業展開との関連性・対象労働者の選定・計画届の記載内容をもとに、管轄の労働局が審査します。
⚠️ 助成金を検討するときに必ず押さえておくこと
- 助成金は審査制であり、申請すれば必ず支給されるものではありません
- 訓練時間10時間以上のOff-JTであることなどの要件があります
- 計画届は研修開始の1ヶ月前まで。事後の申請はできません
- 本コースは2027年3月31日までの時限措置です
- 2026年8月3日施行の改正により、DX化・GX化の訓練でも職務に間接的に必要な内容・職業人として共通して必要な内容は対象外です。eラーニングは同一労働者につき一の年度で1回まで(2026年8月2日以前の契約には経過措置があります)
実際の助成額は訓練時間・受講人数・訓練内容・審査結果によって変わります。制度の内容は年度により変更されるため、検討にあたっては厚生労働省の最新の資料をご確認のうえ、個別の見込みについては社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
5. 訓練時間10時間以上を満たす研修設計の考え方
内容の要件をクリアしても、次につまずくのが訓練時間です。単発の講演(1〜2時間)や半日研修(3〜4時間)は、それだけでは10時間に届きません。1日研修(6〜8時間)でも同様です。
ただし、内容に連続性のある一連のプログラムとして計画届に記載すれば、訓練時間はその合計で判定されます。複数回に分けて設計することで要件を満たせます。代表的な組み方は次のとおりです。
※表の時間は、昼食などの食事を伴う休憩や移動の時間を除いた実訓練時間数です。開講式・オリエンテーションなど事務的な説明は1回の計画届につき累計60分まで、訓練の合間の小休止は1日あたり累計60分までしか含められません。カリキュラムの一部に助成対象外の内容(意識改革研修、自社製品の説明など)がある場合は、その時間も除いて数えます。たとえば3時間の研修を3回行う設計では合計9時間となり、要件に届きません。10時間ちょうどではなく、余裕を持たせた設計にしておくと安心です。
複数回に分ける設計は、時間を稼ぐためだけのものではありません。1回目で学んだことを実際の業務で試し、2回目で持ち寄って改善するという流れにすると、4-2で見た「概念理解にとどまっていないか」という論点にも同時に応えられます。要件を満たす設計と、成果が出る設計は、実は同じ方向を向いています。
6. 申請の流れとスケジュール【6ステップ】
助成金の手続きは、研修を実施する前から始まります。順序を間違えると対象外になるため、全体の流れを把握しておくことが重要です。
- 社内準備
職業能力開発推進者の選任、事業内職業能力開発計画の作成を行います。 - 訓練計画の作成
研修内容・訓練時間(10時間以上)・対象労働者・事業展開との関連性を整理します。研修会社と相談しながら進めます。 - 計画届の提出(開始1ヶ月前まで)
労働局へ提出します。ここが最重要。提出できるのは訓練開始日の6か月前から1か月前までの間で、1ヶ月前を過ぎると申請できません(事後申請は不可)。早めの着手をおすすめします。 - 研修の実施
計画届の内容どおりに実施します。出席簿・実施記録の保管が必要です。 - 支給申請(終了翌日から2ヶ月以内)
実施記録・領収書・賃金台帳などを添えて申請します。あわせて「受講料等の価格設定に関する疎明書」の提出が必要です。 - 審査・支給
審査を経て、要件を満たしていると認められた場合に助成金が支給されます。
手続きで失敗しやすい5つのポイント
- 訓練時間の不足:単発の講演・半日研修だけでは10時間に届きません
- 事前申請の失念:研修を実施してから申請しても対象外です
- 支給申請の期限切れ:終了後2ヶ月を過ぎると受け付けられません
- 計画と実施内容の不一致:届け出た内容と異なる研修は対象外になり得ます
- 受講回数の数え漏れ:同じ社員が年度内に何回受けるかを先に確認しておきます
手続きに要する期間を踏まえると、研修実施の2〜3ヶ月前からのご相談をおすすめしています。
7. 研修会社に確認しておくとよいこと
助成金の申請そのものは事業主が行いますが、計画届に書く内容の多くは研修の中身に関わります。研修会社を選ぶ段階で、次の点を確認しておくと後の手戻りが減ります。
- カリキュラムを職務単位で書き分けられるか:「SNS入門」ではなく「運用担当者向けの投稿設計と分析」というように、対象と成果物が具体化されているか
- 訓練時間の内訳を出せるか:計画届には時間数の記載が必要です。何時間の回を何回行うかを明示できるか
- 複数回設計に対応できるか:単発登壇のみの対応か、実践と振り返りを挟む構成が組めるか
- 費用の内訳が研修とツールで分かれているか:助成の対象になるのは研修の経費です。AI研修とAIツールの導入をセットで契約しても、ツールの導入費用は対象経費になりません
- 書類作成に協力してもらえるか:カリキュラム表・見積書・実施記録など、申請に必要な書類を出してもらえるか
なお、助成金の要件判断や申請代行は社会保険労務士の業務です。研修会社ができるのは、要件を満たしやすい研修設計と、そのための書類の提供までになります。
8. よくある質問(FAQ)
SNS研修やAI研修に助成金は使えますか?
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の対象となる可能性があります。ただし研修のテーマではなく、対象労働者の職務に直接必要な内容かどうかで判断されます。訓練時間10時間以上のOff-JTであることなどの要件もあります。審査制のため支給が確約されるものではなく、本コースは2027年3月31日までの時限措置です。
2026年8月3日の改正で何が変わりましたか?
変更点は2つです。ひとつはDX化・GX化に関する訓練のうち、職務に間接的に必要な内容や、職業人として共通して必要な内容が助成対象外となったこと。もうひとつは受講回数に上限が設けられ、同一の労働者につき一の年度で3回まで、うちeラーニングは1回までとなったことです。契約・申込日が2026年8月2日以前の訓練には経過措置があります。
単発の講演や半日研修でも助成対象になりますか?
訓練時間10時間以上のOff-JTが要件のため、単発の講演(1〜2時間)や半日研修(3〜4時間)だけでは要件を満たしません。ただし、内容に連続性のある一連のプログラムとして計画届に記載すれば、訓練時間はその合計で判定されます。1回4時間の半日研修を3回に分けるなど、複数回の設計にすることで要件を満たせます。時間は昼食休憩や移動時間を除いた実訓練時間数で数えるため、余裕を持たせた設計をおすすめします。
助成金でどのくらい費用の負担が軽くなりますか?
経費助成の率は中小企業75%、大企業60%です。ただしこれは要件を満たすと認められた場合の率であり、受講者1人・1訓練あたりの上限額も設定されています。上限額は企業規模と実訓練時間数で決まり、中小企業の場合、10時間以上100時間未満の訓練で30万円、eラーニング・通信制による訓練で15万円です(厚生労働省の詳細版パンフレット令和8年8月3日版による)。実際の助成額は訓練時間・受講人数・訓練内容・審査結果によって変わります。個別の見込みは社会保険労務士等の専門家にご確認ください。
助成金の申請はいつまでに行う必要がありますか?
計画届は訓練開始日の1ヶ月前までに提出する必要があります。支給申請は訓練終了翌日から2ヶ月以内です。研修を実施してから申請しても対象外となるため、事前申請が必須です。準備期間を考えると、研修実施の2〜3ヶ月前からの着手をおすすめします。
9. まとめ
SNS研修・AI研修は、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の対象となる可能性があります。経費助成の率は中小企業75%、大企業60%です。ただし審査制であり、申請すれば必ず支給されるものではありません。
検討にあたっては、次の点を押さえておく必要があります。
- 対象になるかは研修名ではなく職務との直結度で決まる
- 概念理解にとどまる内容、職種を問わない汎用的な内容は対象外に寄る
- 訓練内容に合った対象労働者を選ぶ必要がある
- 訓練時間10時間以上のOff-JTが要件(単発の研修だけでは満たせない。実訓練時間数で数える)
- 経費助成には受講者1人・1訓練あたりの上限額がある(企業規模と訓練時間で決まる)
- 同一の労働者の受講回数は一の年度で3回まで、うちeラーニングは1回まで
- 計画届は研修開始の1ヶ月前まで(事後申請は不可)、支給申請は終了後2ヶ月以内
- 賃金助成は別枠・条件付き(自動では加算されない)
- 本コースは2027年3月31日までの時限措置
要件を満たす研修設計は、成果が出る研修設計とほぼ同じ形をしています。誰のどの業務を変えるのかを先に決め、実践と振り返りを挟む。助成金の要件は、その設計を後押しする方向に働きます。制度の詳細は年度により変わるため、最新の情報は厚生労働省の資料をご確認ください。
著者プロフィール|上村菜穂(株式会社PR NET 代表取締役)
株式会社PR NET 代表取締役。SNS×AI領域に特化した研修・セミナー・コンサルティングを提供。ダイハツ工業・東芝テック・ロート製薬・POLA・楽天大学(楽天グループ)・東京大学・東京都中小企業振興公社・各地商工会議所など、大手企業から公的機関まで延べ15,000名以上にSNSとAI活用の研修を実施。「SNSは24時間365日働く営業マン」という思想のもと、広告費に頼らないSNS集客の体系化を専門とする。詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。
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